ChatGPTの登場により、多くの企業で生成AIが業務に導入されています。今はまだ生成AI単独で利用する場面が多いようですが、生成AIとRPAを組み合わせることで、大幅な業務効率化を実現することが期待できます。一方、RPAも単独で多くの企業に導入されていますが、まだ活用しきれていないという企業もあるかもしれません。生成AIと組み合わせることでRPAにはできない「判断」が可能になり、RPAの活用の幅も大きく広がります。
ここでは、生成AIとRPAを組み合わせて業務に取り入れることで、どのような効果があるのか、また導入の課題などについて紹介します。
DX推進に役立つ生成AIとRPA
まずは、生成AIとRPAがどのようなものかを紹介します。
生成AIとは
生成AIは、生成系AI、Generative AIとも言い、データやパターンを学習したうえで、新しいコンテンツを生成するAIのことです。「プロンプト」と呼ばれる指示や問い合わせに答えて、回答となる文章や画像などを生成します。文章や画像のほか、音楽、動画、ゲーム、アプリ、プログラムなど、生成できるコンテンツは幅広くあります。
対話型AI「ChatGPT」は最もよく知られており、広く使われている生成AIです。
生成AIについて詳しくは、次の記事をご覧ください
RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)は、PCで行う定型作業を自動化できるソフトウェアロボットです。日々のルーチンワークを自動化することで、業務効率化を実現できます。
RPAについて詳しくは、次の記事をご覧ください。
DX推進に大きく貢献するRPA―導入メリットや注意点・事例まで
DX推進における生成AIとRPA
企業の競争力強化のため、DX推進が必須とされています。
DXとは、デジタル技術を利用して、自社の製品から業務フロー、ビジネスモデル、組織や文化までを変革し、顧客に新しい価値を提供するというものです。
DXについての詳細は、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」でご確認ください。
DXの推進には、ビッグデータやIoT、5Gなどの先進技術が欠かせません。生成AIやRPAも、DX推進に重要な技術です。
RPAを導入すると、次のようにデジタライゼーション(個別の業務・製造プロセスのデジタル化)を実現し、DXの準備を進めることができます。
- 業務効率化
作業の自動化によって、業務効率化を実現できます。 - 作業時間・コストの削減
作業の自動化によって人間の作業時間が減り、コスト削減にもつながります。 - 業務の品質向上
作業の自動化によって人的ミスが減り、全体の品質が向上します。 - 24時間稼働
RPAは機械とソフトウェアなので、24時間稼働させることが可能です。
生成AIは、次のような形でDX推進に役立ちます。
- 競争優位性の確立
生成AIをビジネスに活用することで、コスト削減や生産性の向上を実現し、顧客満足度を向上させます。これは競争優位性につながるものです。 - 新しい商品やビジネスモデルの開発支援
生成AIはクリエイティブな作業やアイデア出しのサポートも可能です。それによって、新しい商品やサービス、ビジネスモデルを効率的に作り出すことができます。 - 意思決定の支援
データの分析と近い将来の予測を行うことで、経営判断や意思決定をサポートします。
以上のように、生成AIとRPAは、企業のDX推進に役立つ技術と言えます。
生成AIとRPAを導入する際の課題と解決策
生成AIやRPAを導入するには、次のような課題があります。
生成AIの課題と解決策
- 機密情報や個人情報の取扱いに不安がある
生成AIに機密情報や個人情報を入力すると、それを結果として出力するリスクがあります。機密情報や個人情報は学習データとして利用しないよう、セキュリティ対策を徹底しなければなりません。 - 誤り、差別、偏見のあるデータが生成される不安がある
生成AIの結果は、学習データに大きく左右されます。学習データに誤り、差別、偏見があれば、そのまま結果となる、いわゆるハルシネーションが発生する可能性があります。それを理解したうえで、学習データを選別して、誤り、差別、偏見のあるデータを排除しなければなりません。 - 著作権侵害の不安がある
学習データが著作権を侵害していれば、著作権を侵害した結果を生成するリスクがあります。学習データを選別し、著作権侵害のあるデータを排除しなければなりません。
RPAの課題と解決策
- 社内のコンセンサス形成がうまくいかない
新しい技術に抵抗がある、導入効果が想像できない、作業を変革するのが面倒などという理由で反対する社員は、他のツールと同程度にいることは、推測できます。
次のような対策を行い、社内のコンセンサス形成を図りましょう。
- 導入の目的を明確化する
- 技術について根気よく説明し、不安を払拭する
- 技術に関するイメージをすりあわせる
- RPAを導入することでどのような効果があるのか、成功例を共有する
- 社内の一部で導入(スモールスタート)し、一定の成果を上げて周知する
- 導入時には使い方を周知・教育する
- どの業務を自動化すればよいのかがわからない
RPAは単純作業や反復作業など定型業務を得意とします。まずは社内のすべての業務を洗い出したうえで、負担の大きい定型業務、人手の少ない部署の定型業務などから導入を検討するとよいでしょう。 - 設定できる人材がいない
RPAの設定にはある程度のプログラミング知識が必要です。社内に人材がいない場合は、ベンダーに依頼する、人材を中途採用する、より簡単なノーコードツールに切り替えるなどの対応を考えるとよいでしょう。 - セキュリティへの不安
まずはセキュリティ対策の担当者を決めておきましょう。誰が設定したのか、トラブルがあった場合は誰に問い合わせればいいのか、定期的なメンテナンスはどの頻度で誰が行うのか、どのような検査を行うかなど、運用ルールを策定します。また、RPAだけでなく、ファイルを暗号化する、操作ログを取得するなどの社内全体のセキュリティ対策を強化することも大切です。
運用ルールには、「ロボットを作成したらシステムに登録して情報システム部門が管理する」といったことも盛り込んでおくと、野良ロボット(管理部門に登録されず、適切に管理されていないロボット)の発生を防ぎます。
生成AIとRPAの組み合わせによるシナジー効果
生成AIとRPAを組み合わせることで、大きな効果が生まれます。
生成AIとRPAの連携にはどのようなメリットがあるか
RPAに生成AIを組み合わせることで、RPAではできなかった「臨機応変な判断」ができるようになります。それによって、より複雑、かつ高度な処理を自動化することが可能です。
また生成AIはコンテンツを作成したり指示を行ったりすることはできますが、実際にものを動かすような作業はできません。しかしRPAと組み合わせることで、生成AIの指示を基にして、RPAが作業を行うことができます。
これによって、さらなる業務効率化が可能です。
生成AIではない従来のAIとRPAの組み合わせについては、次の記事を参考にしてください。
事例あり!RPA×AIは自動化を進化させDX推進にもつながる
生成AIとRPAを連携してどう使うか
生成AIとRPAの組み合わせには、次のような使い方があります。
■メールマガジンを自動的に作成・送付する
- RPAがWebをクローリングして自社の商品情報、セミナー情報、イベント情報などを取得しておきます。
- そのデータを基に生成AIがメールマガジンの文章を作成します。
- 作成した文章はRPAが顧客に送付します。
■データ収集からレポートの作成・送付までをする
- RPAがWebをクローリングして、大量のデータを収集します。
- 生成AIはそのデータを選別して不要なデータを排除します。
- そのうえで生成AIがデータを分析し、レポートを作成します。
- RPAが作成したレポートを送付します。
■プログラミングなしでワークフローを自動化する
- 自動化・効率化したい作業について、プログラミングの知識がない人が自然言語で生成AIに指示します。
- 生成AIがワークフローを作成します。
- RPAがそのワークフローを自動で実行します。
生成AIとRPAの導入を成功させるポイント
生成AIとRPAの導入を、成功させるポイントをいくつか紹介します。
- 目的の明確化
まずは導入の目的を明確にします。それにより、生成AIやRPAをどの部署や業務に、どのように使えばよいのかがみえてきます。 - ワークフローの見直し
生成AIやRPAを導入することで、業務プロセスも大きく変化します。それを前提に現在のワークフローをあらかじめ見直しておくと、現場の混乱を回避することができます。 - スモールスタート
生成AIやRPAの導入効果を理解してもらうため、まずは限られた業務に導入します。実際にその効果を実感することで、社内の理解を得られ、導入範囲をスムーズに広げやすくなします。 - 人材確保・育成
生成AIやRPAを活用できる人材がいなければ、効果を上げることはできません。そこで必要な人材を確保したり、社内で育成したりする必要があります。 - 運用ルールの策定・徹底
生成AIを利用するときには、学習データに注意する必要があります。またRPAでは野良ロボットの発生に注意しなければなりません。運用ルールを策定し、徹底することで、それを防ぐことが大切です。
生成AIとRPAを組み合わせることで生まれる効果を実感してみよう
RPAはデジタライゼーションに大きな効果を発揮します。しかし、RPAは指示された通りにしか動作できません。臨機応変な判断や、イレギュラーへの対処は不可能です。生成AIを組み合わせることでそこを補うことができ、RPAをより幅広く活用することが可能になります。
一方、生成AIは内容を作成・指示することはできますが、それを実現することはできません。しかしRPAと組み合わせることで、実作業が可能になります。
生成AIとRPAを組み合わせることで、RPAの活用シーンが広がり、より高度で複雑な作業を自動化することが可能です。これは、DXの推進にも大きく役立ちます。
組み合わせの効果はわかっており、ぜひ生成AIやRPAを導入したいものの、具体的にはどう進めていけばいいのかわからない、という企業もあるのではないでしょうか?
その場合は、ノウハウを持つ専門家のサポートが必要です。ぜひ、ユーザックシステムにご相談ください。豊富な実績とノウハウをもとに、各企業に合ったデジタライゼーションやDX推進をサポートいたします。